2002年に発行されたこの「フリーエージェント社会の到来」。
グローバル時代において常に周回遅れの我が国日本における「労働者」であるならば、今からでもけして遅くはない、是非一読をおすすめしたい書籍です。
著者のダニエル・ピンク曰く、「フリーエージェント」とは、
インターネットを使って、自宅でひとりで働き、組織の庇護を受けることなく自分の知恵だけを頼りに、独立していると同時に社会とつながっているビジネスを築き上げた人々
ということらしい。
冒頭から、70歳近い「通称ベティおばあちゃん」が、自宅の一室で一台のPCを使いポータルサイトやコンサルティングで喜々として働く姿が描かれている。
アメリカでは既に全労働人口の4人に1人、実に3,300万人もの人々が、この「フリーエージェント」に該当するらしい(1999年時点)。
終身雇用制度が崩壊したと認識されて久しいこの国でも、もはや好むと好まざるとに関わらず、それをネガティブに捉えるばかりでなく、自分と家族の食い扶持くらい、自分の力で獲得していく働き方をポジティブに模索する時代だと認識を新たにする一助になるかと。。。
タイムマシンに乗って、トーマス・ジェファーソンが最初の国勢調査を行った1790年のアメリカに戻ってみよう。当時の労働者は、フリーエージェントにかなり近い働き方をしているように見えるだろう。職人や農民、零細な商人が大勢いる。逆に、いま私たちが一般に考えるような形で「就職」している人にはめったにお目にかかれない。・・・(中略)・・・産業革命が起きるまでは、生計を立てるために必要な道具類のほとんどは安価で手に入れることができたし、巨大なものではなかったので自宅に置いておくことができた。(P54)
しかしその後、産業革命によって、生産手段が高価・巨大化し、個人の手を離れ、結果「資本と労働の分離」が起こり、労働者は「職場」へ通勤することを余儀なくされ、「雀の涙ほどの分け前」を分配される労働形態へ。
そして混迷を極める現在までの過程は、もはや述べるまでもない周知の事実。
それが今、”小型で安価”なパソコンが急速に普及したことにより、再び「自宅に置ける生産手段」を労働者は手にした、ということ。
しかもそれは、文字通り「世界に繋がって」いる。
つまり、今こそ、人間本来の働き方、「フリーエージェント」を再現可能な時代なんだと、ダニエル・ピンクは訴えます。
考えてみれば、「組織人」「サラリーマン」という労働形態の方が”特殊”であり、ほんの100年程度の歴史、ですからねぇ・・・。
確かに、これほどまでに高度に発達した社会において、重厚長大産業の存在意義が全く不要となることなどはあり得ませんが、「働く喜び」や「自己実現」など二の次三の次、いわゆる「滅私奉公」的な組織の一員であることのみが、労働の主たる形態ではないんだと、定年もリストラもなく、自分自身を最大限に発揮した「自宅でひとりビジネス」という選択肢も大いに有りなんだ、ということを、数々の実例と詳細なデータで再認識させてくれるはずです。
400頁弱に及ぶボリュームと、ところどころアメリカ特有の情報に言及する箇所などもあり気軽にサクッとコーヒー片手に、という訳にはいかないかも知れませんが、ゴア副大統領の首席スピーチライターといういわば超エリートな公職をなげうって自らフリーエージェントとなりつぶさに調査・著述されたものだけに、現在、そして近い将来の「働き方」を模索している方には、何らかの指針を与えてくれる、読み応えのある一冊です。
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